院内新聞「多歯言」<第29号>

院内新聞「多歯言」<第29号>

発行:医療法人社団慈篤会 平野歯科医院
発刊日:2011年6月4日
HP:http://www.hiranodental.com

学・震災


想定外の被災状況(患者提供)

東日本大震災に際し、多くの尊い命が 失われた事に深い哀悼の意を捧げます。 被災された方々、患者様に関係のある 被災された方々へ心からのお見舞いと 1日もはやい復興をお祈り致します。今回の未曽有の事態から、私自身多く の事を考えさせられております。
友人、家族の死や、歯科医院の崩壊、その他たくさんの惨事を目の当たりにし、私自身 に出来る支援は何か?迷いながらも、ハブラシをはじめとする義歯ケース、洗浄剤などの 支援物資を被災地へ送り、又、身元確認や医療支援医登録に申し込んだりもしました。  また、これから来るであろう大地震への対応や本来の歯科医療の姿など多くのことを 学ぶことができたのも事実です。


福島県白河市 小峰城(患者提供)
古くからの石垣は崩れなかったが、 新しく積んだものは崩れてしまった

最近の歯科医療においては、早期効果を求め、便利さだけを追求する非人間的な医療 が増加していると感じます。歯科医療の本来の姿は、一般医科における医療とは異なり、 医療効果の持続がその価値の中心にあると言っても過言ではありません。それはつまり、 医療とは患者さんの生活を豊かにする事にその意義があり、人生への支援であるという ことです。
これから私の目指す歯科医療の姿は、本質をしっかり踏襲し温故知新から創造する、基本を更におさえた歯科医療であり、それは病気中心では無く、人間的健康医療をおこない、未病におさえることともいえます。

優秀な医療とは多面的性格を保ち、困難からどう乗り越えるかであり最新の技術を追い求めるだけの医療ではないとも感じさせられました。

大震災やその他の不測の事態においても、これらの考えが揺らぐことのないように、ひらの歯科医院スタッフ一同、今一度手綱を引き締めていきたいと考えています。

ひらの歯科医院 院長  H.J

デンタルプラークという言葉をご存知ですか?

T.S

プラークという言葉はテレビのCMでもよく耳にする言葉ですが、本当の意味を理解している人は少ないのではないでしょうか?プラークは、食事の際に残った食べかすなどと思われがちですが、実は、歯の表面に固着した細菌の塊のことなのです。
プラークは、食べ物の食べかすなどの養分で増殖していき、歯や歯肉を蝕んでいきます。また長期間放置されることによって、唾液の中のカルシウム成分と混合されてやがて歯石となります。 歯石になると歯科医院でなければ取ることは難しくなりますが、プラークのうちは歯ブラシやデンタルフロスなどによる口腔清掃によって自分である程度除去できます。
歯垢は奥歯の周りや、歯と歯の隙間、歯と歯茎の境目など歯ブラシが届きにくいところにたまりやすいため、正しい歯みがき方法を歯科医院で学び、毎日の歯みがきを習慣にして、プラークを取り除きましょう。また定期的にリコールで診ていき、歯石除去などを行っていくことも大切です。

金属アレルギーについて

 

金属アレルギーとは、アクセサリーや日用品に使われている金属により、皮膚がかぶれたり体調不良を引き起したりする状態を言います。少し触れただけで金属アレルギーになる事は少なく、アクセサリーのように、長時間、皮膚に触れる事により発症するケースが多く見られます。
ピアスやネックレス等のアクセサリー同様、歯科で用いられる金属材料の中にもアレルギー反応を起こしやすいものがあります。
最近では金属アレルギーに加えて重金属(密度が比較的大きい金属)の体内蓄積による健康への影響が問題視されるようにもなってきました。特にニッケル、コバルト、クロムなどは成分が溶け出しやすくアレルギーを起こしやすいといわれています。症状としてはアレルギー反応により金属が直接触れる部分に症状が現れるだけでなく、手足や全身まで影響が及ぶことがあります。
金属アレルギーではないか?と思われる患者様への対処法として、パッチテストがあります。パッチテストで特定の金属に対して反応があった場合、原因となった金属を取り除きアレルゲンとならない材料で修復しなおすことにより、その症状は緩解します。そのため、体に 影響の出にくい金属、もしくは金属以外の歯科材料を使うなど、慎重に材料の選択をしていかなければなりません。
当歯科医院では金属をともなわないセラミックス、又は硬質レジン、ハイブリットセラミックスなどの材料の選択肢があります。
金属アレルギーに心配のある方は、スタッフに声をかけてください。


掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)


頬粘膜の炎症

歯周病菌の細菌検査ができます

A.M


ペーパーポイントを歯周ポケットに挿入

歯周病は歯周病細菌による感染症です。通常の歯周治療では効果が得られない難治性の歯周病では、その原因菌を特定するため歯周病細菌検査を行うことがあります。この検査によって6種類の歯周病原性細菌を検出することができ、これら6種の菌は、特に歯周病との関連性が強く、それぞれの細菌により歯周疾患の特徴も異なります。検査の結果、基準値以上の細菌が検出された場合、その細菌に効果のある抗生物質を一定期間服用しながら歯周治療を行う必要も考えられます。
検査方法は2つあり、唾液の採取による口腔全体の目的菌を測定する方法と、歯周ポケットにペーパーポイント(紙を細長くしたもの)を挿入して菌を検出する局所の目的菌を測定する方法です。どちらも簡単な方法で、痛みもなく短時間で終わります。
細菌検査は歯周疾患の現状の把握に有効であり、治療後の効果を明確にすることでより診断を確実なものとする可能性があります。メインテナンスの計画やリコール間隔の決定を判断する目安にもなります。

誤嚥性肺炎と口腔ケア

S.T

肺や気管は、嚥下(食べ物や飲み物を飲みこむこと、ゴックンという動き)や咳、呼吸など身体が生理的に反応することによって守られています。しかし、高齢になると、これらの生理的機能が衰えるため誤嚥(唾液や食べ物が気管に入ってしまうこと)しやすくなります。これは嚥下そのものの機能低下や、咳払いなどをして異物を飲み込まないようにする反射、喉の防御反応が衰えてくるからです。その結果、口腔内の細菌を一緒に誤嚥し、気管支や肺が炎症を起こすと「誤嚥性肺炎」と呼ばれる状態になります。
特に、夜間睡眠中は口腔内細菌の増加と反射の低下によって、誤嚥性肺炎がおこりやすくなります。  また、高齢者だけでなく、要介護者、脳血管障害者、口腔内を清潔に保てない状態にある方、また手術後などで身体の防御機能の低下した方なども、罹患する率が高くなります。
口腔内の細菌を誤嚥して感染がおこりますので、当院のリコールチェックシステムで口腔内のケアを行い、誤嚥性肺炎の防止も図りたいと考えています。

あなたの歯肉の腫れ、薬のせいかもしれません

Y.S

口腔内が清掃不良であると歯肉が炎症を起こし、腫脹や出血を生じる事があるのはご存じだと思います。しかし、きれいにブラッシングをしていても、ある特定の薬を服用していると、副作用として歯肉を腫脹させることがあります。
血圧を下げる薬である二フェジピン、抗てんかん薬であるフェニトイン、免疫を抑制するシクロスポリンなどの薬がこれにあたります。これらを服用し、さらに口腔内の清掃が不十分であると歯肉の炎症は強まり、歯周病の悪化につながります。腫脹した歯肉は、歯ブラシが触れることによる痛みや、出血が起こることが多いため、軟らかめの歯ブラシによる丁寧なブラッシングが必要になります。ブラッシングの改善により、歯肉の腫脹が減少することもあるので、お口の中を清潔に保つことがもっとも大切になります。

歯周ポケットが深い場合には、歯周ポケット内の歯石や、細かい汚れを除去する処置を行います。繰り返し処置を行っても改善が得られず、歯肉の腫脹と炎症が残っている場合には、担当医に薬の変更を依頼する場合もあります。また、口腔内の清掃がしやすい環境と歯周ポケットを浅くするために、外科的に腫れている歯肉を切り取る歯肉切除術が適応となる場合もあります。歯肉の腫脹を副作用とする薬を服用している患者さんの場合、外科などの処置には注意が必要なことが多いため、担当医と連携し、慎重な判断と処置を行わなければなりません。そのため当院では、問診表や治療室、予防室において現在服用中の薬について詳しくうかがうようにしています。
薬によって治療方針が異なる場合もありますので、薬の変更、薬の追加などがあった場合には、一言スタッフにお伝えください。


フェニトインによる歯肉増殖症

歯肉腫脹を副作用とする代表的な薬の製品
二フェジピン・・・アムロジン、アムロジピン、ノルバスク、アダラート、セパミット フェニトイン・・・フェニトイン錠、アレビアチン、ヒダントール シクロスポリン・・・サンディミュンカプセル、ネオーラル


降圧剤ノルバスクによる薬物誘発性歯肉増殖症

あとがき

「多歯言」第二十九号は いかがでしたか?

これから夏に向けて、 計画停電や節電といった話が出ています。
空調を控えることで 過ごしにくい環境に なりますが、体調管理は口腔管理につながります。 みなさん健康に夏を 乗り切りましょう

次回、第三十号は 2011年11月8日の 発行予定です。 お楽しみに

新聞委員

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