院内新聞「多歯言」<第24号>

院内新聞「多歯言」<第24号>

発行:医療法人社団慈篤会 平野歯科医院
発刊日:2009年1月27日
HP:http://www.hiranodental.com

歯の交換時期

A.M

永久歯の萌出、乳歯から永久歯の交換については、その順序や時期に個体差があります。永久歯への萌えかわりは、おおむね6歳前後から始まります。第2乳臼歯(E)の後ろから第1大臼歯(6)が萌えてきます。いわゆる6歳臼歯といわれる歯で、生涯萌えかわりません。6歳臼歯が萌える頃、やや遅れて下あごの左右前歯(A)が動揺し、中切歯(1)に萌えかわり、それに続き、乳側切歯(B)が側切歯(2)に萌えかわります。上下では、下の歯の萌出が先行することの方が多いですが、必ずしもそうではありません。その後、8歳前後に下あごの乳犬歯(C)が犬歯(3)に萌えかわり、9歳前後に第1乳臼歯(D)が第1小臼歯(4)に萌えかわります。上あごに関しては、(C)よりも(D)が先に萌えてくることがよく見られます。
10歳から12歳にかけて第2乳臼歯(E)が第2小臼歯(5)に萌えかわります。そして、永久歯への交換がほぼ終了し、13歳にかけて下あごの6歳臼歯の後ろに第2大臼歯(7)が萌えてきます。それから1年程度の遅れで上顎の(7)が萌え揃うことによって合計28歯の永久歯列が完成します。智歯(親不知)は18歳前後で萌出してきますが、埋伏状態にもより必ず萌えてくるとは限りません。
乳歯は通常、対応する永久歯(Aなら1番)が萌えてくると抜けますが、まれに永久歯が萌えてくる時期になっても抜けないことがあります。これは対応する永久歯が生まれつき欠損(先天性欠如)していたり、何らかの原因で乳歯が抜けなかったりするためです。先天性欠如の場合は、そのまま乳歯を使っていても問題ありませんが将来的に歯を補う治療が必要となってくるでしょう。
乳歯が抜けなかった場合、放っておくと、あとから萌えてくる永久歯が乳歯の表や裏から萌えてきてしまうことがあります。萌えかわりの時期になっても乳歯が抜けない場合、また、左右の歯を見比べてみて片方の乳歯だけが抜けずに残っていたら(3カ月)、乳歯を抜く必要がありますのでご相談ください

ホームブリーチング

H.N

「歯が黄色い」、「歯の色が気になる」、「もっと白くしたい」、このような歯の色に対する悩みをお持ちの方も少なくないと思います。
従来歯を白くするためには、健康な歯を削り白い歯をかぶせる方法が一般的でした。しかしこの方法は、歯に大きな負担をかけるため、最近では健康な歯に過度な負担をかけずに歯を白くする”ホワイトニング”が一般的になりました。ホワイトニングには自宅で簡単に行なえるホームブリーチングと医院で行なうオフィスブリーチングの2種類があります。当院では、後戻りがしにくく自然な白さになるホームブリーチングをお勧めしています。
はじめに、歯と歯肉が健康な状態であるか診察し、ムシ歯などがあれば治療を行ないます。次に自分の歯の形に合わせてマウスピースを作ります。後は自宅でマウスピースにホワイトニングジェルを適量入れ、数時間装着します。個人差もありますが、2週間続ける事で自然な白い歯の色に近づいていきます。興味のある方はスタッフまで声をかけて下さい。

X線の被爆量

S.M

歯科治療や診断を行なう上で、X線写真は非常に重要な情報の1つであり、撮影してすぐに診断が可能なため、治療になくてはならないものです。
欠点としては、放射線の被爆をイメージされる方が多いと思います。また、目には見えないので不安や恐怖を感じても無理はありません。しかし歯科用X線は被爆量を極力最小限度にするよう開発されてきました。結果として、医療によるX線以外の自然放射線(宇宙、太陽などからの放射線)に対して、実に、小さいX線写真1枚あたりで約180分の1、大きいX線写真1枚あたり約70分の1と非常に少ない線量が可能となりました。
以上のことから、歯科で用いるX線は相当な枚数を撮影しない限り、身体に害を及ぼす量ではありません。撮影時は防護エプロンを使用し、少ない線量や枚数で正確な診断や治療、経過観察が出来るように努力しておりますので撮影の際にはご協力をお願いいたします。

妊娠中の方、妊娠の可能性がある方、撮影を希望しない方、不安のある方は遠慮なくご相談ください。

うがい薬、コンクールFの効果

K.Y

うがい薬として主に用いるコンクールFには次のような成分が含まれています。

・グルコン酸クロルヘキシジン
・グリチルリチン酸モノアンモニウム
・緑茶抽出成分(カテキン等)

グルコン酸クロルヘキシジンには殺菌効果があるため歯周病やムシ歯の予防に、またグリチルリチン酸モノアンモニウムには消炎効果があるため歯周病の予防に、そして緑茶抽出成分には抗菌作用があるため口臭予防に効果的です。特にグルコン酸クロルヘキシジンの各種細菌に対しての殺菌効果は高く、持続時間は約12時間と言われています。このため1日2~3回の使用が理想的です。

ただし、個人差はありますが持続使用により歯面に色素沈着する場合があります。1度付いた色素は普段のブラッシングでは落とすのは困難で、その場合はリコールチェック(定期検診)時にクリーニングしますので、気になる方はおっしゃってください。

染め出し液

K.N

染め出し液はブラッシング指導の時に使用し、口腔内の歯垢を赤く染め出す液です。ムシ歯や歯周病の原因となる歯垢は、歯と同じような色をしているため口腔内のどこに残っているのか分かりにくいものです。歯並びにより歯ブラシの当てにくい所がある方、磨いていてもムシ歯になり易い方、歯周病にかかっている方、矯正装置が入っている方等は、これを用いて歯垢を赤く染め出すことにより自分の口腔内の清掃状態をチェックすることができます。
染め出しの手順は、

・綿球や綿棒等に染め出し液を含ませ歯の表面に塗布します。
・水で軽くすすぎます。
・歯垢の部分が赤く染まります。

この赤色を落とすように歯ブラシや補助用具(フロス・歯間ブラシ・糸ようじ)を使用し手鏡でよく確認しながらブラッシングをしていきます。染め出し液を使用することによって、歯垢を自分の目で確認することが出来、患者様ご自身の家庭でのセルフケアにも役立ちます。

タバコと歯周病

O.T

喫煙者は非喫煙者と比べて、歯周病になる要因(リスクファクター)の一つであることがわかっています。どれだけなりやすいかは、喫煙量や喫煙歴などで違いがでます。また、禁煙をすることによってそのリスクを下げることもわかっています。また、難治性歯周炎という治りが悪い歯周病の患者さんでは喫煙者の比率が高くなることがわかっています。
喫煙者の歯肉をみてみますと、角化や繊維化が高まり(歯肉が硬くなる)、色素沈着を認める事も多いです。これは、熱による物理的刺激や、化学物質による化学的刺激が原因と考えられています。また、ニコチンによる血管収縮により歯周病の初期兆候が隠されてしまいます。そのため、外見からは歯周病が進行していることに気付かない場合が多く見られ、歯周組織の検査を行うと上の前歯や上の奥歯の内側に歯周病が起きている方が多く、前歯の歯肉が下がりやすい傾向にもあります。
タバコの歯周病への影響は、タバコを吸うことによって歯周病菌が増えると言われています。また、好中球の走化性(敵に向かって走っていく性質)や貧食能(敵を食べる能力)を傷害して殺菌能(敵を酵素や活性酵素でやっつける能力)を刺激すると言われています。走化性や貧食能が傷害されることは本来の仕事をしなくなることで、殺菌能が刺激される事は周りの自分の組織まで傷つけることになります。

これらのことから、歯周病の治療をされている方は禁煙をする事により治療効果が上昇する可能性があるため禁煙も治療の一つと考えられます。

あとがき

「多歯言」第24号はいかがでしたか。
今号は患者様から質問の多かった事項を記事にしました。
他の事柄でも質問があれば伺いますし、また新聞記事のリクエストも承っております。

次号25号は2009年6月4日発行の予定です。お楽しみに

〈編集委員〉

ページトップへ