私たちの身体の目、耳、鼻、口などの感覚器官のなかでも、口・歯は、会話する、食べる、味わう、口元の美しさや豊かな表情など多くの機能をもった器官であり、その人の心と生活の象徴でもあります。歯科医という職業柄、多くの方の口の中を拝見し、歯を失った状態に接することがあります。
このとき、その人の歯科治療の経験やそのことに伴う煩わしさばかりでなく、食事や生活の様子までも、歯からうかがい知ることができます。
その中で、人生をライフサイクルでとらえ、治療を行った患者様の一部をご紹介いたします。
ライフサイクルにおける治療の事例
患者さんは、通法の矯正治療の診断では、小臼歯4本を抜歯となりますが、患者自身の成長を利用することで、23歳になった現在4本の歯を抜かずに機能的、審美的に、良好な歯列を獲得することができました。
現在も6ヶ月に1回のリコールで来院しています。
成長期の可能性を感じた症例です。
1997.12
初診時
8歳
2001.3
咬合育成治療中
12歳
2013.3
治療後
23歳
抜歯しない矯正治療(咬合育成治療)
初診時 11歳
上アゴは、非常に深く狭く、歯列もV字型歯列で、出っ歯で、
下の前歯が上アゴの歯肉と噛んでしまう状態です。
舌、唇も力が弱そうです。
患者さんの診査(チェック)
- 鼻中隔彎曲
- 急性中耳炎(4才10ヶ月)
- アデノイド肥大
- 風邪をひくとよく熱を出す
- 口唇が日中小さくあいていることが多い
- 睡眠中口が開いている
- 睡眠中横を向くことが多い(右)
- 自分で姿勢が悪いと思う
- 休日や暇なときは家でゴロゴロしている
- 椅子に座っているときに寄りかかることが多い
- 座ったときは脱力していることが多い
- 靴が変な減り方をする
- 勉強するときの姿勢が悪い
- 歩くときがに股になってしまう
- 朝食はパンが多い
- 食事の時はテレビがついている
- 夜はベッドで寝ている
- テレビを横向きになってみていることが多い
- 寝相が悪い
- テーブル、机に向かうとすぐひじをつく
- 前歯であまりかみ切らない
- 姿勢が悪い
- テレビを見ながら食べている(横)
生活や全身疾患を調べることにより、歯列不正の成立要因やサインが多数の項目から診断されました。
側方顔面図(プロフィロ)での確認
初診時 11歳
側方の診断において上下のアゴの位置関係を診断しました。
下アゴが後方へ大きくずれこんでいます。
抜歯しない矯正治療(咬合育成治療)
初診時 11歳
治療後 23歳
初診時と23歳になった口腔内の状態です。審美的、健康な口腔内に満足しています。
上アゴの状態も正常になり、歯列もV字形からU字形となり正常に改善されています。
機能的で良好な歯列を完成することが出来ました。
現在も6ヶ月に1回のリコールで来院しています。
抜歯しない矯正治療(前歯叢生)
初診時 11歳
治療後 14歳10ヶ月
初診時には上の前歯に強い叢生(凸凹)が存在していましたが、咬合育成治療と成長をうまく利用し、機能的で健康な歯列を育成中です。