院内新聞「多歯言」<第20号>

院内新聞「多歯言」<第20号>

発行:医療法人社団慈篤会 平野歯科医院
発刊日:2006年11月8日
HP:http://www.hiranodental.com

口の中に使用する金属について

私達の口の中は非常に環境の変化の激しい所です。いつも唾液で湿っており、また飲食物の影響で普段はアルカリ性である口の中が酸性になり、さらにお茶やアイスクリームなど、約70~80℃の温度差を受け続けます。こうした状況の中で、歯の治療で詰めたりかぶせたりするのに使用する金属は、長い年月を問題なく使用できなくてはなりません。
様々な金属がある中そういった点を考えると、金は最も安定した良い金属と言えます。金は唾液による腐食や変色がなく、生体親和性に優れている為、身体に害の少な い金属です。しかし硬さの点において、金のみでは軟らかすぎるので、銀などを加え ることで強度を高めます。私達の歯科医院では、成分の80%以上を金が占める高カ ラット金合金を使用しています。こうすることで、硬すぎず軟らかすぎず、健康な歯に近い硬さの修復物を製作することができます。そのため、微妙な噛み合わせも確実に調整でき、隣の歯や噛み合わせの歯に影響を口の中に使用する金属について与えることもなく、自然な感じでしっかりと歯を噛み締めることができます。また、薄く延ばしても強度を失わないので、 歯にピッタリとした精度の高い修復物を作ることができるため、歯と金属の境目からのむし歯を抑制することができます。近年問題になっている金属アレルギーに対しても、高カラット金合金は金属の溶出が少ないので、アレルギーを起こしにくく安心で きます。
このように高カラット金合金は、多くの良い点がありお薦めしたい金属です。

DT

口臭について

私達の口の中の関心事の一つとして「口臭」があります。そして、その口臭を気にする人は全年齢層で約15%もいると言われています。
口臭には口の中が原因で起こるものと、喫煙やストレス、全身疾患、それに伴う服用薬が原因で起きるものに分けられますが、今回は口の中の原因について説明します。
口臭の原因は「揮発性硫化物」という物質であり、これを発生させるのは口の中の細菌です。その細菌が繁殖する原因、手助けとなっているものと予防方法をいくつ か紹介します。
1.歯周病
これは最有力原因の一つです。歯周ポケットが深いほど細菌が増し、ガスの貯留量も多くなります。また、排膿による悪臭も加わります。
2.舌苔
これは舌の表面に付着する汚れで、細菌の貯蔵庫となります。舌苔が厚い場合、深部は細菌の温床となり悪臭発生の場となります。舌苔を取り除くには、湿らせたガーゼや毛先が丸く加工してある軟らかな歯ブラシで、舌の表面を力を加えずに軽くこする方法などがあげられます。
3.歯垢
これは細菌の塊です。歯と歯肉の境、特に歯肉が退縮すると、歯間に清掃困難なスペースが生じ、歯垢が残り、口臭が発生します。補助的な清掃具を使用し、清潔に保っことで予防が可能です。
4.むし歯
虫歯の穴に入り込んだ食べカスの腐敗や、根の病巣からの排膿が悪臭につながります。
5.不適合な補綴物(詰め物、かぶせ物)
歯に適合していない詰め物やかぶせ物の周囲は多くの食べカスや歯垢が残るスペースが存在し、歯周病が進行しやすいため、口臭の発生源になります。
6.不衛生な義歯
入れ歯にも食べカスや歯垢が付着し、細菌が増殖します。毎日ブラシで磨き、義歯臭を取り除くようにしましょう。
7.ドライマウス(口腔乾燥症)
唾液には、食べカスや歯垢を洗い流す自浄作用や清潔に保つ抗菌作用があります。唾液の分泌が減ると、それらの作用が弱まり、口臭が発生し易くなります。出来るだけ咀嚼を意識し、唾液の分泌を促すことが口臭予防に繋がります。
これらのことから、口臭を特別な症状と捉えずに、口の中の状態や生活習慣と深く関連している事を理解して日常の心懸け、ケアによって改善につなげていきましょう。

DH K.A

洗口剤について

最近、洗口剤を使用している人が増えていますが、どのような基準で選んだらよいのでしょうか。
洗口剤には抗菌作用や消炎作用のある薬剤を使用したものや口臭予防の為の香料を配合したもの、フッ素入りのものなどがあります。辛すぎるものやアルコール含有量の多い物は、口の中が乾燥してしまい、かえって細菌の活動が活発になってしまいます。当医院では、歯周病学的な観点から、グルコン酸クロルヘキシジンが配合された物をお勧めしています。これは、むし歯の発生および進行の抑制、歯肉炎・歯周炎の予防、口臭を防止する作用があり、12時間もの持続的な抗菌作用を発揮します。ただ、洗口剤を使用しても、お口の中の汚れが落ちるわけではありません。歯ブラシで充分に汚れを落とした後に補助的に洗口剤を使用して下さい。

DH E.C

 

口内炎とは

口の中の粘膜に炎症が起こった状態を口内炎といいます。比較的広い範囲に病変が発生し、口の中に原因があって起こる場合と、全身的な病気の症状として起こる場合がありますが、原因が不明なものも少なくありません。
例えば、無意識に、唇や頬の内側を咬む人もいますし、鋭い形の食べ物は、口の中や歯肉を傷つけます。また、適合の悪い義歯、あるいは頬の内側や歯肉に擦れる矯正装置は口の中を切ってしまうこともあります。さらに、誤ったブラッシングも、同じ結果をもたらします。これら全ての損傷は口腔粘膜を痛め、口内炎を引き起こしやすくなります。しかし、一般に口の中の傷は唾液の作用によって治りやすいといわれています。 それでも治らないようでしたら軟膏をお出しすることもあります。
また、全身的な原因には、栄養の欠乏やストレスなどがあります。そのような場合には、充分な栄養と休養を得るように心掛けましょう。

Dr

むし歯進行抑制材って何

フッ化ジアンミン銀とは、フッ素と銀が含まれた薬液です。
当医院では主に、ムシ歯の抑制として使います。ムシ歯の進行を抑制できる限りはこの薬液を使い、なるべく歯を削るのを遅らせます。今歯を削るのと、1年後または 5年後・10年後に歯を削るのでは、将来の歯の寿命に差が出てきます。また、歯質強化としても使います。ムシ歯を長く放置したために治療が必要となった歯において、崩壊し軟らかくなってしまったたんばく質を凝固させ歯質を固めます。金属で修復するような歯に対しては、金属を合着する前に薬液塗布を行い、ムシ歯の再発を予防しています。また、知覚過敏症の抑制としても使っています。
このように、用途は様々ですが、この薬液の銀がムシ歯質のたんばく質に作用し、 たんばく銀を形成し、ムシ歯の進行を抑制します。この時、たんばく銀が黒く変化するため、歯が黒くなりますが、心配はありません。定期的な塗布を続けることに効果があるので、リコールチェックを受けるようにしましょう。

DH

「高齢者よい歯のコンクール」に参加して

私は知人の紹介で、約20年前、平野歯科分院にお世話になり、当時の分院長は平野治朗先生でした。当時、治朗先生の、“抜歯はせずできる限り使える歯は残す”という基本方針をお聞きして、たいへん感激しました。以来、年2回診療を受け、その都度、悪い箇所を治療していただき現在に至っています。75歳の時に、初めて、「高齢者よい歯のコンクール」に参加し、優秀賞を受賞しました。以来、毎年このコンクールに参加し、76歳の時も優秀賞を受賞しましたが、77歳~79歳は優良賞でした。
今年は80歳になりましたが、年初め頃より、歯茎が腫れだし、東海大学医学部口腔外科を受診し、抗生物質の投与を受け、一時的に腫れが引いたものの、再発するなど、歯の根の治療をしなければ、抜歯するしかないと言われたものでした。そして再度、分院の大八木先生の懸命な治療を受け、その結果約5ケ月を経過した今日では、正常に戻っています。本当に感謝しております。今年の「高齢者よい歯のコンクール」に ついては、希望者が100名以上出願され、そ「高齢者よい歯のコンクール」に参加しての中で75歳代15名、80歳代10名が、書類選考で選出され、その1人として加えられたことはたいへん光栄に思っています。今回は残念にも優良賞に終わりましたが、選出されたことは良かったと思っています。今後はさらに上の賞を目指して頑張っていきたいと思います。
終わりに、O先生を始め、歯科衛生士の皆さんのたゆまぬご指導に感謝し、ペンを置くことにします。

平成18年9月25日
W.Y

脇さん御兄弟へ

Yさん御兄弟へ

健康な毎日を過ごせてなによりです。約20年前から口腔の健康を目指して支援させて頂き幸せです。自分自身、口腔の健康維持は生命の次に大事な事と感じております。 脇さん、この調子で無理せずに、これからも楽しい幸せな生活をenjoyして下さい。

平野 治朗

あとがき

「多歯言」二十号はいかがでしたでしょうか。

今回で無事二十号をむかえることができました。今後も三十号、四十号と続けられるよう、スタッフ一同頑張っていきます。
最後に、今回原稿を提供して頂きましたW.Yさん、Sさん御兄弟に心から感謝いたします。これからも皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。

第二十一号は平成一九年六月四日発刊の予定です。
(編集委員)

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