院内新聞「多歯言」<第17号>

院内新聞「多歯言」<第17号>

発行:医療法人社団慈篤会 平野歯科医院
発刊日:2005年6月4日

子供たちの健康な歯並びを育成

最近、来院しているお子さんたちに歯並びの治療装置の入っている姿が多くなりました。それは、当院では小児の治療には、虫歯予防だけではなく噛み合わせの健康な育成が不可欠であると考えられるからです。
歯並びを悪くする理由には遺伝因子が影響しています。しかし原因はそればかりではありません。食事の軟化やパターン化された育児などによって引き起こされた口腔諸機能の低下、身体的変化また全身的疾患などの影響によって顎の未発達が引き起こされます。それによって歯と顎のサイズが合わなくなるために悪い歯ならびになってしまうのです。そういう子供たちが最近増加しています。
小児の歯ならびの治療にはいくつかの特徴があります。第一に、鼻疾患、舌小帯強直、そして口呼吸などの機能的影響がどの程度影響しているか診断する必要があります。ただ単に顎と歯のサイズのバランスを整えるだけでは解決できません。第二に、小児期は個体差が大きく、成長のパターンが様々考えられ、治療効果も大きいので、個人にぴったり合ったプランニングが必要になります。
第三に、子供たちは生活の中で様々なサインを発していますので見逃さないことです。第四に、小児に対する精神的な面への配慮も重要です。そのために治療の方法、時期(タイミング)、効率、そして器具の選択の重要性が要求されます。これらのことをしっかり診断し、治療し、長期間経過観察しなければなりません。

症例1

 

「咬合育成第2期治療」
反対咬合の治療ですが、約一年半の治療で噛み合わせは正常になり、姿勢も良くなり頬の膨らみも出て可愛くなりました。その後4年間経過観察しています。

症例2

 

「咬合育成第3期、4期治療」
顎が小さく、前歯が外・裏側から生えて歯並びが悪いということで来院しました。現在は期間中ですが、本人の希望通りに歯を抜かずに、しっかり噛める綺麗な永久歯列になりました。
もし、噛み合わせが悪いと、顎関節症や全身への悪影響を引き起こすこともあります。そのために、よい噛み合わせと歯周病に強い口腔の確立が重要なのです。それには、小児期の適切な診断とプランニングにより、永久歯を抜かずに奥歯の噛み合わせを作ることがとても有効です。子供たちには未来があります。親からの希望、期待そして夢もあります。これからも私たちは全力で努力し、協力していきます。子供たちが成人になってから感謝されるような健康な口腔を確立していきましょう。

副院長 平野治朗

 

私の学んでいる咬合育成

咬合育成とは成長を利用することにより、歯が生えるスピードを確保し、歯を抜かないで正常な歯並びや咬み合わせを作ることです。咬合育成は離乳食の与え方から始まります。赤ちゃんから大人まで、人はいろいろな環境に左右されながら成長発育していきます。その成長発育期において、何気なくしている癖・悪習慣(頬杖、指しゃぶり等)などにより、身体のバランスの乱れが歯並びに悪影響を及ぼします。
日常習慣からその原因を探り出し、歯並びや、咬み合わせに異常がでないよう、また発音や咀嚼に異常が出ていないかを定期的に管理することや、成長発育が正常に行われていないと思われるものに対しては、手遅れにならないように、発育方向のコントロールが必要です。歯列不正、不正交合を起こしてしまったものに対しては、装置を使用するのはもちろんのこと、舌・口腔周囲筋のトレーニングが必要になります。咬合育成は口の中を見ているだけでは成り立ちません。歯を動かすだけでなく、舌・口腔周囲筋のバランスを整え、全身をも考慮し個人個人の生活環境を見直すことで昨日と形態を改善へと導きます。

DH 石田 佳子

母乳育児と虫歯

赤ちゃんの虫歯は上顎の前歯の裏側によくできます。その原因は、哺乳瓶に入れる果汁などの糖分によるものです。また、甘いものに慣れてしまっていてその後の食習慣にまで影響します。母乳そのものは虫歯と無関係で、母乳中の菌は繁殖しないとも言われていますので、母乳が十分出ていれば母乳が有利です。
母乳育児で虫歯の予防するには、

1. 離乳準備食として加糖果汁をやめる。(母乳の10倍から15倍甘い)
*一般的に3~4ヶ月くらいで離乳準備食として果汁やスープを与える傾向がありますが、1997年の米国小児科学会では母乳栄養児には最初の6ヶ月は水、果汁そのほかの飲み物は必要ないとも言っています。子供に合わせた離乳の心がけを忘れないことです。
2. 歯が生えた後も糖分が高いおやつを与えすぎない
3. 適切な歯磨きを心がけ、添い寝の授乳の後も含めて上の前歯の裏側を1日1,2回ガーゼで拭くだけでも効果がある。
4. フッ素の塗布
5. お母さんの虫歯の治療をする

母乳そのものは虫歯の原因になりません。子育ての根底は母乳で育てることです。母乳は強く、優しく、頭の良い子に育つといわれています。単に強い子のための母乳栄養から母乳育児という考えになってきています。 母乳育児は、人間を育てるためのやさしさの原点であり、育児の原点ともいえると思います。授乳という行為は、母乳という物質よりも大きな意義を持っているのです。 

Dr 大八木 考昌

歯牙破折・脱臼時の歯科医院に来るまでの対応

交通事故・殴打・転倒・スポーツにおける衝突などで、歯が破折(欠ける・折れる)や、脱臼(グラグラする・抜け落ちる)してしまうことがあります。破折の場合その破折の状態によって、抜歯をやむをえずする場合もありますが、修復することもできますので、破折片は必ずもって来て下さい。
脱臼の場合も、1~2時間以内であれば歯を再植(もとの位置にもどす)ことができます。歯が破折・脱臼すると、痛みや出血がありますが、あまりうがいなどせず、口の中は触らないほうがよいです。完全に脱臼してしまった歯は、水道水での水洗いは30秒以内にして根の方は触れずに、牛乳又は唾液につけるか、きれいなガーゼをぬらして歯をくるんだ状態で歯科医院に持ってきてください。これらは歯についている歯根膜という大事な繊維に、傷をつけないようにする為です。
もし歯が破折・脱臼してしまったら、できるだけ早く歯科医院や口腔外科へ行くようにして下さい。特に再植は早ければ早いほど治療後の経過が良いのです。

DA 桜井 隆子

歯周精密検査の必要性

歯周炎(歯槽膿漏症)とはどんな病気かご存知ですか?歯周炎は炎症が歯肉だけでなく他の歯周組織まで波及したもので、放置すると歯を支える顎の骨が吸収されてしまいます。そして多くは痛みを伴わないため自覚症状のないまま進行する病気です。顎の骨の吸収には数歯にわたって均一に吸収される水平型骨吸収と、1~2歯に限局して垂直性に吸収される垂直型骨吸収があります。垂直型ではその状態によってレントゲンでも確認が難しい場合があり注意が必要です。そこで炎症の程度を診断する検査が必要になります。検査には歯周基本検査と歯周精密検査があり、どちらの検査も歯の動揺と歯周ポケットの有無(深さ)を測定します。歯の動揺は歯を支える組織の炎症や外傷等により起こります。基本検査では術者がピンセットで歯を動かし、精密検査では専用の機器を使用して診査します。機器を使うことにより、術者による誤差が出ず正確な診査ができます。歯周炎が進行し顎の骨の吸収がみられる部位はポケットが深くなります。基本検査では1歯につき1ヵ所、精密検査では1歯につき6カ所のポケットを測定します。
測定値が1ヵ所の基本検査では、正確な顎の骨の形態がわかりません。精密検査で歯の周りを6カ所測定してはじめて顎の骨の形態がはっきりしてきます。例えぱ地図を描くとき方角や距離の測定値をできるだけ多くとったほうがより正確な地図が出来上がるのと同じで、検査も精密に行ったほうが症状を正確に把握することができ治療や予防計画を立てる上でとても重要な資料になります。
そしてそれを積み重ねることによって小さな変化を見落とさずに迅速な対応が可能となるわけです。そのためにも定期的にリコールチェックを行い、少なくとも年に1回は精密検査をしておくことが歯周炎の治療や予防に大きく役立つのです。

DH 黒河内 良枝
 

あとがき

多歯言第十七号は、いかがでしたか?
今回は皆様が身近に感じられる内容を取り上げてみました。
今まで疑問に思っていた点が少しでも理解していただけたら嬉しく思います。
また、昨年からホームページを新設し、新聞のバックナンバーや平野歯科で行われている診療状況が載せられていますので是非ご覧下さい。
第十八号は平成十七年十一月八日発刊の予定です。
〈編集委員〉
・佐藤 直 ・安藤 美紀  ・栗本 綾子 ・高崎 幸子

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